キャリアコンサル

日本でハラスメントがはびこるわけ

ハラスメント予防は人権の視点から

本文の要点

⇒日本では欧米に比べ、ハラスメントが表面化しにくい。これは文化の違いや法律の違いが影響している。

⇒日本人は人権が苦手で、ハラスメント予防が形だけになる可能性がある。

⇒日本の管理教育が子どもや若者の意思決定を排除し、人権意識の未熟さを招いている。


⇒“人権後進国”の日本はLGBTQや多様な生き方に対する、国際的な変化に追いついていない。

⇒欧州では自身や周囲のために声を上げる人が尊敬されるが、日本ではそれがバッシングの対象となってしまう。

パワハラ、セクハラ等々のハラスメント。もちろん日本だけでなく、海外でもハラスメントはあるのですが、日本はアメリカなどに比べるとそれが顕在化しにくい面があります。

それは文化の違いで、日本は集団の輪を乱さないことや上下関係を重んじて、なるべく目立たないようにふるまうことが大事と考えたり、ガマンを美徳とする風潮があったりなど、こうした点が影響を与えているわけです。

また、法律の面でも異なります。アメリカを例にすると、ハラスメント予防を怠ったとされる企業に課される賠償金には制裁的・懲罰的な意味合いが持たされ、その金額は企業規模に応じて莫大なものとなり得ます。

日本ではまだ2024年現在、ハラスメントが厳しく言われるようになったのが最近のことです。これから変化があるものと思われます。
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文化の違いと申し上げました。前述した「日本の文化」とは言い換えれば、人権を尊重しない文化であるとも言えると思います。

日本人は人権が苦手で、日本は人権後進国です。「ハラスメントとは何か」や「どう対応するか」、「心理的安全性やチームビルディング」を学ぶことはもちろん大事ですが、人権を守るということについて知らなければ、いくらハラスメント予防に取り組んでも、仏造って魂入れずになるのではないでしょうか。
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雑誌『ビッグイシュー日本版』2024.8.1号に、「日本の若者は人権マイノリティ」という特集記事があります。子どもの自殺者数が2022年、2023年と500人を超えて過去最高になるなど、日本の子どもや若者たちの生きづらさが進んでいるということが書かれています。

記事にもありますが、これには日本の管理教育が大きな影響を与えています。子どもや若者は未熟だから、意思決定には参加させず、大人(学校・教員など)がすべて決めてそれに従わせるというのが管理教育の基本となっています。

そうして大人になったかつての子どもたちは、いつまで経っても自分が生まれながらにして人間だというだけで持つ固有の権利に関して“未熟”なままというわけです。

記事には日本が管理教育に染まっていくのと真逆に、欧米では「子どもや若者のの人権を守る民主化が進んだ」とあります。

たとえば、1976年1月生まれの私は、地方の中学校で男子の丸刈り強制校則に反発して行動しましたが、これまでの日本は、そんな私のような“変わり者”は排除され、生きづらい国でした。今もそうですが。

LGBTQ、ジェンダー、多様な生き方・あり方の尊重等々。日本は国際的なめまぐるしい変化に対応できず、右往左往しているように見えます。

欧州では自分のためだけではなく、周囲の環境を良くするために声をあげる人は尊敬されて、感謝されるのだとか。日本はその逆で、調子に乗るな、余計なことを言うな、勝手にわれわれの代表面するななどとバッシングを受けます。

それは、「自分は何もケアされてこなかったのに」(これがまさに人権を尊重されていないということです)という傷付き体験もそうさせるのでしょう。SNSで赤の他人や問題を起こした芸能人をこき下ろすようなことも、根底では同じなのかもしれません。

集団を重んじる文化や管理教育のこともありますが、日本では長く「人権問題=同和問題」と思われてきたことも、少なからず人権が苦手という側面に影響を与えていると思われます。

日本の企業は、ハラスメントは人権問題であるとして、
SDGsのバッチをつけて、やった気になって、ハラスメント予防研修に世間から非難されないための小手先のテクニックばかりを求めるのではなく、本気で腰を据えて取り組まなければ、営利企業として長くは持たないでしょう。

私はそうしたハラスメント予防研修を企画して、行うことができます。

【参考】雑誌『ビッグイシュー日本版』2024.8.1号「特集 日本の若者は人権マイノリティ」

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